机越しに向かい合っている奴は、殺気立っていた。 俺はできるだけ、相手を刺激しないように説得を続けた。
「あと一歩だ」 そう思いかけた時、突然奴の目が左右を泳ぎ、落ち着きがなくなった。 奴がおもむろに内ポケットに手を入れる。
「ドン!!!」
やってしまった。だがやらなければ、倒れていたのは俺だった。
奴の死体を転がし、内ポケットをあらためると、奴が掴んでいたのは震えるアイフォーンで、画面には彼の美しい妻の写真が表示されていた。
誤解というものは、時として取り返しがつかない。
「ミネ、白髪あるで。抜いたるわ」 そうやって抜かれた僕の黒くて健康な髪の毛も、戻ってくることはない。
追記 何気なく『ランボー』を見始めたのだが、そういえばこれもある種の誤解の悲劇だ。