平成が終わり、令和が始まろうとするころ、ぼくはプールに浮かんで空を眺めていた。
ぼーっと空を眺めて改元の喧騒から離れたかった。崩御を伴わない改元は祝賀ムードのようで、暗い平成を振り返り、さらに不安な先行きを感じさせるようだった。
世間の憎しみは、この世界を作った政治家や官僚だけでなく、逃げ切ろうとしている社会階層にも向けられつつある。 はじめは、そこそこジョークじみたニュアンスで発せられていた「上級国民」という言葉が、最近では真性の憎悪以外に説明のつかない熱量を帯びて、口々にささやかれ始めているのだ。
もはやこの国で、人生の盤石と安心を確立することは難しくなった。
だからこそ、かつての繁栄と秩序がまだ残っているうちに「逃げ切る」という考え方が、注目され、羨望され、時には嫉妬深く、語られるようになっている。
GWにのんびりリゾートに来てはいるが、こんな余裕は仮初のものだろう。控えめに言って30過ぎて養う家庭がないから享受できているようなもので、一歩踏み外せば転げ落ちる気がする。
続けてこのニュースを見て、とにかくもう日本のインターネットから目を背けたくなった。だからプールに浮かんで必死で何も考えないようにしていた。
Twitter、Facebook、はてなブックマークをスマートフォンから一時的にアンインストールした。海と空を見て、酒を飲んでいた。
海辺のリゾートというのは喧騒から離れるのにうってつけだ。
部屋のベランダからプールに降りて、プールの端のバーでカクテルを飲んだりしていた。なにか考えをまとめるわけでもなく、ただただ空っぽになってぼーっとしていた。日付も時差も忘れていて、気がつくと元号が改まっていたようだった。
いいホテルだった。こういうリフレッシュが人生には定期的に必要なのだろう。また行きたい。
今日でGWも終わる。