積読を消化しようという機運が高まっている。最近買ったアレを読めていないとかもはやそういう次元ではなくて、いつ買ったかわからないが本棚にある本をめくっている。
『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』は、ぼくは羽田圭介は羽田圭介、クルマを買う (WPB eBooks)を最近はじめて読んだぐらいにしか縁がないので、おそらくどこかの大型書店のゾンビ本コーナーで買ったと思われる。どこかの大型書店というとまず間違いなく池袋のジュンク堂だろうとおもうのだが、初版発行日を見ると2016年11月。そのときぼくはすでに東京から京都に引っ越してきている。出張の折にわざわざでかい本を買っているとは思えない。Amazonで履歴を見ると、2017年2月に買っていたようだった。買った理由はさっぱりわからないが、ゾンビ関連書籍に関しては、その辺の町の本屋さん(なんてものはもうそうそうないが)よりも自宅に揃えてあるので、特にゾンビ本である以上の理由なく買ったのだと思う。
なので、内容はまったく知らない。知らないが、読み進めるとゾンビ的な状況の中で複数の人物が織りなす物語で、その複数の人物の多くは出版関係者だ。「あなた、まだ、自分が生きていると思っているんですか?(作家として)」と担当編集に内心思われるような泡沫専業純文学作家、その編集者、多作ではないが一定の評価を得ている美人作家、新人賞に落ち続けて自費出版を検討しているワナビー。文芸誌の発行部数よりも新人賞応募者のほうが多い状況を嘆いたりと、ずいぶん自虐的なことを書いている。*1
そういう中で、普通のゾンビストーリーだとほとんど無視される「なぜゾンビが発生したのか」ということについては「コンテクスト」という文脈を作っているといえる。いまさらゾンビもので、極限でも協力し合えない人間関係なんてものは書く必要がない。インターネットに浸って思考を画一化していくことへの警鐘、それは現在のロシア・ウクライナを中心に日本も他人ごととは言えない世界情勢に対して必要なもののように思う。「ウクライナ侵攻 なぜ」とか安易にとびつける答えを探す思考ではなく、自分なりの思考をしなくてはならない。
*1:ちなみに出版や文壇的なコンテクストについては、この本を買った2017年にはあまり関心がなかったが、最近は仕事でも出版関係のサービスを作っているし、個人でも1冊本を出しているのでかなり面白く読める。昨年はさっぱり個人としての活動ができなかったが、やはりこの分野は好きなのでかかわり続けていきたい。