今のところ、生涯を通じてもっともよくできた勉強は思想史だった。
高校の頃は「倫理の神」と一部からは呼ばれ、対して努力もしない割にセンター試験は本番も模試も含めて90点を割ることはなかったと記憶している。
大学で経済学部に入ってからも、もっとも高い評価を得たのは社会思想史の97点だった。
もっとも、勉強ができたという以上のことはなく、大学とはいっても経済学部にいるような学生は思想史なんておおむね興味はなかったし、もっとハードコアな人文系を先行している友人も多かったので所詮高校レベルのお勉強ができたに過ぎないということを自覚していた。
それでも趣味レベルでは思想史というものがいまだもって好きではあり、マルクスとフロイトはその中でも好きな人物だと言っていい。とりわけマルクスの下部構造が上部構造を規定するという思想は、ぼくの生涯を通じて一番衝撃を受けた考えだった。
なので、映画を見てたらそのマルクス(役の男優)のセックスが映ったのは、なんとも言い難い感情が去来した。
内容は真面目な伝記映画であって、真面目な伝記であるがゆえに、マルクスと妻の仲睦まじいセックスシーンを描写せざるを得ない。妻との仲睦まじいセックスというのがまた見てはいけないものを見てしまった感を強めている。
フロイトの方は、別になんてことなくて、あるよねとおもっていたらあるようなものがあった。それ以上のことはない。