ミネムラ珈琲ブログ

AI画像Tシャツ屋/ITラノベ著者/さすらいのコーヒー屋/WEBサービス開発チームマネージャーの日記

リモートワークで手を汚さない殺し屋『暗殺コンサル』

ふらっと買ったけどめっちゃおもろい。個人的な今年のナンバーワン小説がすでに決まりました。*1

主人公の仕事は、暗殺のコンサルタント。具体的に言えば、顧客(暗殺対象)が自然な死に至るシナリオを書くこと。それだけが仕事であってそれ以上のことはしない。自分が手を動かすどころか、殺人を実行する人間に依頼をするとかそういう一切のことをしない。ただシナリオを書くだけ。

そんな仕事がそもそも必要なのか、なぜ主人公がこんな仕事をしているのか、そういう荒唐無稽なことを「なるほど、あってもおかしくないな」と思わせる話が展開されていく。

最終的に自殺(に見せかけた殺人)とするのなら、そこに至る自然なシナリオを用意しなくてはならない。そのために顧客の家庭を崩壊させたりとか、丁寧にストーリーを作っていく。

なぜそんな仕事をさせられるかといえば、主人公がアマチュア推理小説家だったからだ。メジャーなジャンルにも関わらず今ひとつ商業的には振るわない。そういう創作の能力が人を殺すシナリオライターに活かされる虚しさ。

荒唐無稽な設定ないのに、読み終わったあとに、ぼくもこうやって誰かに依頼されて、リモートワークのやつが書いたシナリオで、およそ殺人とは疑われないような形で死ぬのかもしれないなと思ってしまった。

そういうエンタメの面白さを持ちつつ、「お前もリモートワークの殺人者じゃないのか」と突きつけてくるのがこの本だ。

ぼくももっぱらリモートワークであれこれマネジメントするのが仕事だが、ぼくのやった仕事の結果や過程において人が死んでいないかと言われると、なにも言えない。ぼくもリモートワークの殺人者といえる。

というかリモートワークかどうかは関係ない。自分の仕事が誰かを殺していないかなんて言い切れる人間は多くないだろう。仕事だけじゃない。生活の中で買うもの、使うサービス、それらが人を殺していないとでも?

仕事がどれだけ尊くても、人に幸せをもたらしていても、一人でも人が死んでいい理由があるのか。そういうことを突きつけられる。