不思議なことがあった。
朝、会社に向かって歩いている途中のことだ。
つい1ヶ月ほど前に、会社が移転をしたので、駅からは5分少々、大通り沿いを歩くようになった。
初日はGoogleMapを見ながら、「なかなか着かないな、少し遠いな」と思ったりしたものの、住めば都とはよく言ったもので、3日も立つと電車を降りて、「今日はどの仕事から片付けようか」なんて考えているうちに、気がつけば会社の前に着いているようになった。
それが今日は少し違った。ほとんど変わらないのだけれども、少しだけ違った。
いつも通りの道を歩いていると、都内でよくみかける酒屋に目がいった。
店の外にも商品が陳列してあって、その中には屋久島の焼酎『三岳』も並んでいた。
それを見て、「ああ、そういえば卒業旅行の屋久島ではずいぶん飲んだなぁ、うまかったなぁ」と思ったのだけれども、気が付くとその一本を取って店内に入っていて、レジでお金を差し出していて、ボトルの入った袋を下げて店から出てきていた。
この間の自分の行動は、さながら伊藤計劃の『ハーモニー』で語られる「意識のない少数民族」のように、内面的には極めて非人間的でありながら、外面上は極めて人間的な行動に感じられた。