ミネムラ珈琲ブログ

AI画像Tシャツ屋/ITラノベ著者/さすらいのコーヒー屋/WEBサービス開発チームマネージャーの日記

エイって決めた根拠のない締切が社会を動かしている

仕事をしていると、何月何日までにこのプロジェクトを完遂する、とか今年度中にこの数値を達成するとか大小さまざまな締切や目標と向き合うことになる。

ぼくは立場上、そういう締切・目標を与えられる側でもあるし、設定して与える側でもある。

そしてそういう締め切りの日付や目標の数字には、明確な根拠はない。ある程度の土台はあるのだが、どこかでエイっと決められる。

例えば営業の売上だと、市場の状況、いまのメンバーの実力、人員計画なんかをもとにどのぐらいいけそうかという予想があり、そこに最後にエイっと保険をかけたり、逆に背伸びをしたりして数字を決める。

ITプロジェクトにおけるリリース目標日なんかも、このぐらいの人月がかかりそうだとかそういう見積もりはあるにしても、しかし事業計画上いつまでにリリースすべきだとかそういうところから最後はエイっと決める。

Excel上で1.9億ぐらいかなーとヨミを立てたけど、エイっと2億にしてみたり、見積もり的には年末ぐらいにいけそうだと思ったものを1月末ということにしてみたり、その1000万の増減とか1ヶ月の調整とかに深い理由はない。意味はあるかもしれないけど、それが1100万でない理由や1ヶ月と3日でない理由は根本的にどこかで説明は出来ない。

締切とか目標があると、緊張感があって当然しんどいし、なんでこんなシビアな締切にしたんだとか思ったりする。自分で決めてても稀に思う。が、そういうエイっと決めた目標がないと物事は一切進まない。目標がないようなプロジェクトにはリソースが割り振られないからだ。

ぼくだってリソースを割り振る側の顔としては、「別にいつやってもいいんです」というものには何も割り振れない。他に目標が迫っていることがいくらでもある。「別に根拠はないけど自分の感覚としていつぐらいまでにやりたい」と言ってもらえるだけで、少なくとも検討のテーブルに載せられる。そこからしか始まらない。

その上で検討のテーブルで選ばれるには、「なぜやるか」のストーリーがあると良い。見積もりとか予測とかのデータは目安にはなるが、それよりもストーリーが欲しい。見積もりで3人でやれば半年で終わるとなったとしても、それをいつ着手するかを示すのはストーリーだ。2億ぐらいの売上見込だといったところで、それをなぜ稼がないといけないのかのストーリーがないなら、人も目標も削ったって良いはずだ(実際には人だけ削られることが多そうだ)。

そのストーリーは別に自分でゼロから紡ぐ必要はなくて、上位の部署や会社の計画や目標とか、あるいは業界や技術の動向とか、そういう誰かのストーリーに乗っかって、そこに自分なりの語り口とか付け足しをしておくと良い。

そういうエイっと決めた目標や締切を総合的に考慮して部署の計画が固まり、組織と人が動く。会社やその他の組織でもそれぞれのエイっと決めた目標が合わさったり衝突したりして、社会が動いていく。誰かがエイッと決めた根拠のない締切で社会が駆動しているので、ぼくらはエイっと締切を決めないといけない。

まれに外から与えられるハードリミット、たとえばIEが使えなくなりますなんてこともあったりするが、これだって誰かがIEを2022年6月15日にサポート終了すると決めたのであって、これが5月15日でも7月15日でもない6月15日だったことに別に明確な根拠はないだろう。そういう大きなシビアな決断をしてくれたので、ぼくのような仕事をしている人間はそのストーリーに楽にのっかって仕事をすることができるので、そういうリミットはしんどいこともあるけど、決めている仕事自体は大変なものだなとリスペクトしている。

社内で計画っぽい会話をしていたときに思ったことを言語化しておきたいなと思って書いた。