はてなインターネット文学賞がカクヨムでの最終結果が発表された。
されたというかした。
コンテスト全体とか受賞作について思うことは最終結果のテキストの中に凝縮されているのですが、そういう会社としてのことをさておいても個人的にも楽しんだなと思う。というか完全に通常業務を外れてエクストラな感じ(婉曲表現)でやっていたので趣味じゃないとおよそやってられない。
そういうわけで個人的に楽しんだ記録として、よかったやつ5つを書き残しておく。
東京に巨大な男性器が生えて開会式ができない件
タイムリーで下品な風刺というのはインターネットの最大の強みだと思う。100年前の宮武外骨の滑稽新聞みたいな時代と違って、新聞は形式張ったものに成り下がってしまったので、風刺みたいなものはもうフィットしなくなってしまっている。インターネットでも風刺を許容されない空気は年々強まっているとは思うが、それでもまだ大丈夫。開会式で得意げに長話をするおっさんに怒るぼくにとって、この小説は救いだった。
無敵のあなたへ
こちらも風刺チックな作品。政治というか社会。インターネットには日々人々が呪いのことばをつぶやいている。呪いのことばというのは何言ってるかわけわかんない呪文ではなくて、むしろ具体的な死や不幸の状態の記述なんだというのは中島らもの『ガダラの豚』で学んだけど、インターネットにおいては呪いを受けた人間の心理的作用以外にも、この小説みたいな形式で呪いが効くシーンがあるのだと思う。
シュレディンガーの消えた猫
シュレディンガーの猫って秀逸なミームだと思う。本来的には物理学の小難しい話がこんなにも柔らかにひろまって理解されているのは稀有な例だと思う。シュレディンガーの猫に比べたら、アインシュタインの時間の感じ方のたとえ話なんてバカみたいだ。別に物理学の小説ではないけど、なんともいえない読後感とうまさがある作品だった。
スケキヨ式入浴法
理解のできないものに惹かれがちな傾向があるんだけど、この小説はマジでなんでこんなもの書こうと思ったのかさっぱり理解できなかった。そういう理解できないものに偶発的に出会えるのはインターネットの良さだよなと思う。
イヌゥvsネコチャン
出てくるミームはインターネットやってると馴染み深いんだけど、総合して物語として見せられるとさっぱりわからない。AIが書いた前衛芸術みたいになってるんだけど、AIがこれを書けるレベルに達することがあるのかというと疑問が残る。「なんだかよくわかんねえもんを見ちまったな」みたいなのが個人的に好みなインターネット文学なのだろう。